*ボンヅ

 何億人の中から君を選んだんだ。何億人にとって君は意味なんてないんだろう。たったひとかけら、どうでもいいだろう? ただそれが僕には大切だったりする。

 君と同じ人がいようと意味なんてない。意味は僕が君を選んだことにあるんだろう。巨大な宝くじ、それを引いたのは僕。そこに意味を持たせるんだろう。

 僕は君がいいな。君の隣がいいよ。出来れば手を繋ぎたいな。受け止めてくれるかな? 強く握っても崩れないでほしいな。

 これが夢でないといい。君の隣というこのシートは、一体いくらだというんだろう? ドル、円、いやいや僕自身。そうだよね? 君がそう思ってくれるから価値がある。

 ただこのシートはずっと僕だけのものなのかな。代わるのは嫌だな。代わりたくないな。正解かなんてわからない、譲りたくはないな。

 けど君が僕を信じなくなれば、そこは僕のシートじゃ無くなる。悲しいな。それでも僕は君を選ぶ。

 僕がいなくなったら、このシートは冷えちゃうな。けどそれはいいや。隣のシートが温かければそれでいいんだ。小さな息遣いがそこにあればいいんだ。

 日に当たった若草のような温もりが、そこにあればいいんだ。

 冷えてほしくないな。温めてやりたいな。守ることは無理かもしれない。だけどライトは当ててあげたいな。

 消えてほしくないな。そこにいてほしいな。崩れてほしくないな。掴んでくれなくても、いつでも手を差し延べておきたいな。