*のん

――嘘をついても心が痛まない人には心がないんだね。

 って君は呟いた。それに僕はそうだねって同意した。そして僕はまた嘘をついた。

 君は口を尖らせて嫌だなぁって表情を曇らせて、流れる川面だけ眺めた。そうだね、胸がちょっとだけ痛んだ。

――新しい夢を見つけたら、そのとき少しだけ歳をとったんだ。

 彼がそう言ったのを聞いて、それにも僕は同意した。つまり古い夢を見たままで、新しい夢を手に入れないかぎりは年端とらないんだって。

 いつだって僕は子供で、歳なんてとれないんだろう。

――どこか何かが欠けているって周りにもわかるような人は、きっと神様がなにか部品を付け忘れたんだ。
 その狂信者は耳元で囁いた。さすがにそれに同意するわけにはいかなかった。
 そうだとしても認めるわけにはいかなくって、他に意見がない癖に否定するしかないんだって。

 なんだってそうだ。物事の本質はいつだってそうだ。嘘で固まっていて、虚像を夢見て、理屈づけられないものは否定しているだけだって。

――本質っていうものは、結局主観から観測した信じたものでしかないの。

 彼女の言う通りだ。それが全てだ。間違いなく正しいよ。というかそうでしかない。

 そう思いながらも、君の口を尖らせた表情を思い出す。ただ、胸がちくりとしただけなんだ。